TCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示にあたって
気候変動に対する認識
不動産セクターは、世界全体の温室効果ガス排出量のおよそ40%に責任があるとされており、気候変動に伴う移行リスクと物理リスクの影響がひときわ大きいものと考えられます。このため、本投資法人では、気候変動関連のリスクと機会を分析し、それを投資戦略に適切に織り込んでいくことが投資主価値の長期安定的な成長に不可欠であると認識しています。その柱となるのが、エネルギー消費効率の高い設備への切替えや太陽光発電装置の設置であり、それらを通じて、本投資法人は温室効果ガスの排出削減を着実に進めています。
TCFD提言への賛同と情報開示の充実化
本資産運用会社では、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、国内のTCFD賛同企業による組織であるTCFDコンソーシアムに加入しました。
本資産運用会社を含むラサール・グループは、2050年までのカーボンニュートラル実現にコミットしており、1.5℃目標に整合する2030年中間目標をグループ全体として発表しました。これには、Scope 1及び Scope 2、可能な範囲のScope 3の CO2排出量が含まれます。本資産運用会社においても、ラサール・グループの一員として、気候変動への取り組みを一層深化させていくとともに、投資家をはじめとするステークホルダーの皆様との対話を強化すべく、気候関連課題に関する情報開示の充実を今後も図っていきたいと考えています。
TCFD提言に基づく開示の詳細については、以下をご覧ください。
- 2022年12月22日
- TCFD提言に基づく説明資料 PDF
ガバナンス
本資産運用会社は、気候変動を含むESG課題への取り組みを継続的かつ組織的に推進するために、ESG推進体制を整備しています。
ESG推進体制の詳細については、こちらをご覧ください。
戦略
シナリオ分析
TCFD提言では、探索的シナリオ(さまざまな可能性のある未来を探索して作成されたシナリオ)に基づく分析を求めています。
シナリオ分析とは、各シナリオの道筋に応じて、気候変動に関するリスクや機会を検討し、自社の事業や経営にどのような影響を及ぼすか、また影響に耐える能力(レジリエンス)はあるかを検討することです。
本投資法人でも、シナリオ分析を実施し、経営層を含めて気候変動リスクが本投資法人に与えるリスクと機会を把握し、それが事業に与える財務的影響を検討しました。
シナリオ分析の前提
本投資法人は、パリ協定の趣旨を踏まえて、4℃シナリオ、1.5℃/2℃シナリオの2つのパターンを設定しました。時点は、CO2排出量削減の中間目標の期限である2030年を想定しました。
時点 | 気候変動リスクの分類 | 主に参照した情報源 | ||
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4℃シナリオ | 1.5℃/2℃シナリオ | |||
2030年 | 移行リスク | 脱炭素社会を実現するための新しい規制・税制・技術等によって生じるリスク | CO2排出量の抑制に失敗 (IEA World Energy Outlook 2021) |
2050年までにCO2排出量ネットゼロを達成 (IEA NZE) |
物理リスク | 気象の変化等、気候変動そのものによって生じるリスク | CO2排出量が想定されうる最大値に増加 (IPCC第6次報告書SSP5-8.5) |
21世紀半ばでCO2排出量がネットゼロ、21世紀後半でCO2排出量がネットゼロ (IPCC第6次報告書SSP1-1.9・SSP1-2.6) |
シナリオの設定
リスク及び機会の特定、財務的影響及び対応
分類 | リスクと機会の要因 | 区分 | 財務的影響 | 財務的影響の程度(1) | 対応策 | ||
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4℃ シナリオ |
1.5℃/2℃ シナリオ |
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移行リスク・機会 | 政策・法規制 | 炭素税の導⼊による税負担・CO2排出抑制に係る運営コストの増加 | リスク | オペレーションコストの増加 | 中 | 中 |
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技術 | 新技術・設備への対応の遅れや切替コストの増加 | リスク | 新規設備投資によるコストの増加、再生可能エネルギーに切り替えをしない場合、発電促進賦課金による電気料金の増加 | 中 | 中 |
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環境認証/低炭素物件の需要増加 | 機会 | テナントの環境対応物件に対する需要の増加を受けた物件価値上昇による賃貸事業収入の増加 | 小 | 大 |
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環境性能の⾼い施設運営や低炭素エネルギー使⽤によるコスト削減 | 機会 | 気候変動による保有物件のZEB化に伴うランニングコストの減少 | 中 | 中 |
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市場・評判 | 顧客企業ニーズの変化に対応しきれない場合の評判・競争⼒の低下 | リスク | テナント退去による賃貸事業収⼊の減少 | 小 | 中 |
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投資家・レンダーからの評判・評価の低下に伴う負債調達コストの増加 | リスク | 有利子負債の調達金利の上昇による支払利息の増加 | 小 | 大 |
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投資家・レンダーの環境対応に対する評価向上による負債調達コストの低下 | 機会 | 有利子負債の調達金利の低下による支払利息の減少 | 小 | 大 |
分類 | リスクと機会の要因 | 区分 | 財務的影響 | 財務的影響の程度(1) | 対応策 | ||
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4℃ シナリオ |
1.5℃/2℃ シナリオ |
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物理リスク・機会 | 急性 | 洪⽔の激甚化による損害保険料の増加 | リスク | 損害保険料の上昇 | 小 | 小 |
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洪⽔の激甚化による損害コストの増加 | リスク | 水害被害による改修費用の増加 | 大 | 中 | |||
浸⽔リスクの⾼い物件の資産価値・賃料収⼊の減少/洪⽔の激甚化による事業停⽌リスクの増⼤ | リスク | 水害被害を受け事業停止期間の発生による賃料収入の減少 | 大 | 小 | |||
災害に強い物件の需要の増加 | 機会 | テナントの災害対応物件の選好による賃貸事業収入の増加 | 小 | 小 | |||
慢性 | 平均気温の上昇による操業コストの増加 | リスク | 冷房使⽤量の増加によるエネルギーコストの増加 | 小 | 小 |
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(1) | 各リスクと機会の影響を定量的に算定の上、2021年8月期の営業利益に対して1%未満を「小」、1%以上5%未満を「中」、5%以上を「大」としています。 |
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リスク管理
本資産運用会社は、気候変動を含むESG課題への取り組みを組織的に推進するために、リスク管理体制を整備しています。
リスク管理体制の詳細については、こちらをご覧ください。
●投資判断時
運用資産の新規取得にあたっては、デューデリジェンスの一環として、サステイナビリティリスクに係わる調査を実施し、それによって特定されたリスクを評価したうえで、投資委員会にて投資判断を行っています。具体的には、土壌汚染、浸水リスク及び浸水履歴、環境認証の取得有無を含むエネルギー効率、水利用効率、廃棄物管理、建築資材の安全性等を確認しています。
●運用時
サステイナビリティ推進委員会において、気候変動リスクを含むサステイナビリティに関連したリスク全般の管理、モニタリングを実施しています。保有物件のすべてについて、毎年度「サステイナビリティ・マネジメントプラン」において、環境パフォーマンスのモニタリングとともに、気候変動リスクとレジリエンス向上の対応策が策定されます。その進捗状況は、定期的にサステイナビリティ推進委員会に報告され、必要に応じて追加対策を適宜検討しています。また、サステイナビリティ・ガイドのテナントへの配布や各物件のサステイナビリティについての意識向上や改善を目的としたテナントとの意見交換を行っています。
指標と目標
CO2排出量及び電気使用量
ポートフォリオのCO2排出量について、CO2排出量原単位をKPIとしてモニタリングを行い、照明のLED化や敷地内の太陽光発電設備導入などの取り組みを進めた結果、2021年にCO2排出原単位を2017年対比で約31.5%削減し、30%削減する目標を達成しました。
これを受けて、さらに意欲的な削減目標として、2030年までにCO2排出原単位を2019年対比で50%削減を目指します。
環境データの詳細については、こちらをご覧ください。
環境認証・評価取得率
保有物件の環境性能に関する透明性や信頼性を高めるため、環境認証・評価の取得を推進し、2025年までに保有物件の環境認証・評価取得率を100%とすることを目指します。
2022年8月末日時点で底地を除く保有物件で取得率100%を達成しました。
環境認証・評価の取得の詳細については、こちらをご覧ください。